ロシアのSVAROG社の20番用モールドZVEROBOYによる弾頭造り。
ZVEROBOYはSVAROG社のサイトで直接購入できる、またはebayでも購入可能だ。
ZVEROBOYの弾頭を1000個近く作成してみて、やっとそこそこの弾頭が作れるようになってきた。
スクラップ屋で鉛を入手しインゴットを作る
ネット上では純度の高い鉛インゴットを購入する事もできるのだが、純度が高いだけあって高価である。
射撃用弾頭にそこまでの純度を求めてもそれほど大きな意味を持たないので、私はスクラップ屋で安い鉛を購入する事にした。
スクラップ屋では様々な種類の鉛があり不純物も何がついているか判らないが値段の安さが魅力的だ。
価格は1kgあたり200円。(鉛の種類によるらしい)
私が購入した鉛の板は厚みがそれほどでなければハサミで切ったり千切ったりできるので鍋に入れやすい。
これを30kg購入してきた、税込み6,000円である。
鉛を溶かすのに使用するポットは鉄の中華鍋。
熱源はガソリンを使用するSOTOのMUKAストーブ。
鉛であればこのストーブで問題なく溶かす事ができる。
MUKAストーブの足は小さいので、鉛により高重量になった中華鍋を乗せるにはバランスが悪い、結果こうなる。
(こぼれた鉛は再利用しました)
なので四方をレンガで囲む。
赤レンガは側面の凸により多少グラつくし高温時にバキっと異音を発した事から、現在は耐熱レンガを使用している。
鉛は溶かしている時に有機ガスを出すし、スクラップ屋で購入したての鉛は表面にどんな物質がついているか判らないので防毒マスクは必須。
高温物を扱う事になるが、長時間高温物を手で持ったりする事は基本的にないのでワークマンなどで売っている牛皮の厚手のグローブを使用している。
モールドのピンから弾頭を外すのに手間取ったりすると熱いが今までなんとかなっている。
購入してきた鉛には鉛ではない物質も付いているし混ざっている。
鉛は比重が重いので溶けてくれば基本的に不純物は鉛の表面に浮いてくる。
しかし鉛が溶けても鍋についたサビなどの粉状の不純物は鍋についたままだし、鉛の量が減ってきたタイミングでサビが浮いてくる。
鍋は使用まえにサビ取りをしておくのが良いだろう。
不純物をすくうのは穴あきのオタマが便利だ。
細かい不純物はロウソクを折って鍋に入れてあげればある程度固まってくれるので取りやすい?(と先輩から指導されたがあまり効果は感じていない)
また鉛は溶かしている最中に表面がどんどん酸化して?膜ができ、そのうち塊ができてくる。
これらの酸化した?鉛カスは使用できないので、手早く作業を行うようにしたい。
不純物をある程度除去したら、溶けた鉛はインゴットにしておく。(金属を貯蔵しやすいような形で固めたもの)
わざわざ台形の型を使用する必要はなく、私は先輩より引き継いだ100均の灰皿4個を使用している。
30kgの鉛から出来上がったインゴットは27個で重量は27kg。
使用したガソリンは2L未満、上手に作業できてれば1Lも使わなかったかもしれない。
鉛インゴットを溶かして弾頭を作る
インゴットや失敗した弾頭などを溶かしていく。
画像の鉛は先輩より渡された鉛で、私の溶かした鉛とあきらかに色が違う。
鉛はどんどん溶かす、5kgは最低でも溶かす。
私が使用している中華鍋は幅が広い為ディッパーですくうのが大変だからだ。
鉛が溶けたらディッパーで鉛をすくう。
ちなみに画像中央上部にあるカスが酸化した?鉛で、鉛の表面の膜が酸化?しつつある鉛。
これらはディッパーの穴をつまらせるので時折鍋の端に寄せておく。(鉛が流れきったら鍋の外に)
弾頭作成で使用する道具はオタマなどの他、鉄より柔らかいハンマー、ベビーパウダー、ハケ。
ZVEROBOYのモールド。
ピンの上部とモールドの上部の弾頭になる部分(丸ぽっちすぐ上のスジから上)にはパウダーをハケで毎度付けるようにする。
理由は後述する。
ピンを取り付けたモールドの上部の蓋の穴から鉛を流し入れて少し溢れさせる。
溢れ出た鉛が下にこぼれ落ちることもあるので鍋の上で作業すると良いだろう。
鉛が豪快にモールドにこびりついてしまっても、蓋を外す際に一緒に簡単に取れるので問題ない。
鉛は約5秒で硬化する。
5秒間はモールドを動かさないよう保持した方がスジのできが良いと信じている。
鉛が硬化したら鍋の外においたパレットの上などでモールドの上部の蓋の出っ張りをハンマーで叩く。
蓋についているカッターが余分な鉛を切断すると同時に、ロックされたモールドを解放できる状態にする。
作業を始めてから5個−10個程度はピンから弾頭が外れにくかったり弾頭表面がシワシワだったりするだろう。
これらは鉛とモールドが十分に熱くなれば起こらなくなる。
弾頭造りを始めたばかりの頃はモールドをなるべく温める為に鉛を入れてから30秒から1分近く待ってから弾頭を取り出していた。
しかしあまり長く弾頭をモールドに入れていても効果は感じられなかったので、今は鉛が固まったら(5秒)即弾頭を取り出している。
ただしテンポよく弾頭を作っていかないとモールドが冷えてしまうので忙しい。
ガソリン式ストーブはしばらく使用しているとタンクの圧力が低下して火力が弱くなるので、火力が弱いと感じたらポンプして火力を強く必要がある。
火力が弱いと当然鉛の温度が低くなるので、弾頭が上手く作れないようになる。
失敗した弾頭やカッターで切られた鉛は後ほどでも次回でも良いので溶かして再利用する。
出来上がった弾頭の総重量を計量したら溶かした鉛の90%位だった。
今は鉛を使い切らないので正確なロスト率は不明だが、不純物は絶対に出るので幾らかはロストしているだろう。
スポンサーリンク
ZVEROBOYの弾頭失敗作例
鍋の鉛がディッパーですくえなくなる位少なくなったらさっさと作業は止めて余った鉛は次回分に回してした方が良い。
鉛が少ない状態で弾頭を作成すると鉛が冷えやすいのか、このような失敗作ができあがりやすくなる気がする。
弾頭もピンからなかなか抜けにくくなるし、良いことが全くない。
弾頭造りを始めたばかりの頃の完成した弾頭はほとんどが失敗作である。
左の弾頭がまあまあの出来(と当時は思っていた)、右が失敗作。
ZVEROBOYには上・中・下と3本のスジがあるのだが、このスジが綺麗にできていないと机の上で弾頭が綺麗に転がらない。
弾頭部はスジが欠けやすいし、中や下はスジが歪になりやすい。
綺麗に転がらないという事は弾頭の重量バランスが悪いし、スジが欠けていれば空気抵抗も変わってくるので、発射された弾頭がどこに飛んでいくか予想もつかない。
何故このような弾頭ができるのか考え、試してみたら下記が原因のようだと判明。
- モールドとピンに毎回パウダーを付けていない
- 鉛の温度が低い
パウダーはピンから鉛が剥がれやすくする為に付ければ良いものだと当初は考えていた。
なのでパウダーはピンから弾頭が取れにくいと感じた時にだけ付けていた。
またモールドに鉛がくっつくといった事は稀なので、基本パウダーは付けていなかった。
しかしこれらは間違えた考えで、この方法では半数以上スジが変形した失敗作が出来上がった。
比較的出来が良い弾頭を調べてみると弾頭の色が違う事が判明。
つまり弾頭にパウダーが付着していたのだ。
なので、弾頭造り4回目からは弾頭1つ毎にモールドとピンにパウダーを付ける事にした。
結果失敗作ができる事は非常に稀となった。
ピンやモールドに弾頭が張り付いた時(取れにくい時)は失敗している場合が多い。
鉛の温度が低いとモールドやピンに弾頭が張り付きやすいので、火力(圧力)には気をつけるようにする。
モールドも冷えると弾頭がくっつきやすくなるので、作業は手早く行った方が良い。
スポンサーリンク
ZVEROBOYの弾頭の重さと、弾頭のワッズへの固定
失敗作を除いた弾頭200個を計量してみた。
弾頭は1度に作成した物ではなく、2日に分けて作成した物。(雨天と曇天)
デジタルスケールは0.01gまで計量できるのだが、そこまで細かく分類すると大変なので0.01g単位は切り捨て0.1g単位の分類。
- 21.1g 10個(5%)
- 21.2g 40個(20%)
- 21.3g 66個(33%)
- 21.4g 66個(33%)
- 21.5g 18個(9%)
今回の計量では21.3gと21.4gが最も多く出来上がった。
1日目に作成した物は21.2g-21.5gで21.4gが最も多かったのだが、2日目に作成した物は21.1g-21.4gで21.3gが最も多くできあがった。
製造された弾頭の重さの偏りの原因は、1日目と2日目では私の鉛と貰い物の鉛のブレンド比が異なっていたからだと思う。
私の鉛のインゴットは表面が虹色なのに対し貰った鉛は鉛色だし、それぞれをブレンドしないで作成した時の弾頭のテカリ具合からしても鉛の質が異なるのだろう。
私が使用するワッズは海外フォーラムでお勧めされていたワッズ(SVAROGの物ではない)、国内では販売していないので5,000個を個人輸入。
このワッズはUSAで購入すれば1個あたりのコストは約3円なのだが、輸入するとワッズ本体以上の送料+関税により、1個あたりのコストは約9円となる。
このワッズは上下対称のカップ状で、重量は1.88gだ。
このカップの中にZVEROBOYの底の円がすっぽりハマり、スジがカップの縁に綺麗に乗っかる。
しかしカップに弾頭を乗せただけでは弾頭がグラグラして不安定なので、ワッズと弾頭をネジ止めする。
ZVEROBOYはワッズとネジ止め固定するよう中央に穴が空いているのだ。
弾頭とワッズの中央にネジ止めするには、事前にワッズに下穴を開けておいた方が良い。
電動ドライバーではワッズ中央にまっすぐの穴を開ける事が難しいので、ボール盤を使用して穴を開けるのが間違いない。
下穴は1.5mmで開けている。
ワッズに下穴を開けたら弾頭とワッズをネジで固定する。
しかしZVEROBOYの穴のスペースは底に行くに従い狭くなっていく形状となっている為、ネジを適当に選ぶと皿部分が上の方で引っかかってしまう。
様々なネジを購入しては試し、ついにぴったり合うネジを発見した。
商品名は大里のニッケル建具用木ネジ 皿 2X19 546−100だ。
このネジはホームセンターで1箱300円前後で購入できるだろう。
重さは0.385g。
今回の弾頭は21.3gと21.4gが多くできあがったので、これらを各50個ずつ用いて実包を作成する事とする。
総重量は21.3+1.88+0.385=23.565付近なので、レシピブックによく登場する7/8ozの24.8gの範囲には余裕で収まっている。
スポンサーリンク
シェルに弾頭を入れてみる
日本で購入しやすい散弾銃用の火薬はHodgdonの「LONGSHOT」「UNIVERSAL」かIMRの「4756」あたりか。
現在IMRの4756はあちらの国では廃盤で新しいレシピには登場しないので、「LONGSHOT」「UNIVERSAL」から火薬を選択するのが無難な気がする。
Hodgdonのサイトでは簡単にレシピ検索できるのだが、ステップ2で「シェル」を選択する必要がある。
日本にもシェルを売っている銃砲店があるのかもしれないが、私は知らないので射撃場でゴミとして捨てられているシェルを拾ってきて再利用する事にする。
射撃場で拾えそうなレシピで登場する「シェル」の中で拾える可能性があるのは「Remington」「FEDERAL」あたりだろうか。
しかし20番の「Remington」「FEDERAL」のシェルが射撃場に落ちている事は非常にレアで、ごく稀に国産Remingtonが捨てられている程度。
黄色のシェルが捨てられていたらほとんどがREDBIRDだと思って良い。
私が今まで撃ってきた各社のシェルコレクションをつまんでみると、それぞれシェルの硬さが異なる。
Remingtonと国産Remingtonは硬めで、FEDERAL、REDBIRD、Rottweilの3つはRemingtonよりあきらかに柔らかい。
600個以上は所持しているREDBIRDのシェルで実包を製造したいと思っているが、レシピには登場しないシェルとなる。
このシェルを使用して実包を製造するにあたり、レシピで参考にするのはシェルの硬さが似ている「FEDERAL」かなと個人的に思っている。
あくまでもシェルの硬さが「似ている」だけで「同じ物」ではないので、そのレシピを参考にするのは当然自己責任だ。
REDBIRDのシェルの口は何故これほどまでにグチャグチャになってしまうのか。
このままでは綺麗にクリンプできそうもないので、ぐちゃぐちゃになっている部分をカッターでカットする。
毎度カットする高さが異なるのもよくないので器具を作成した。
いろいろ試してみたが、塩ビ管のTSチーズ 13が大きさやコスト的にも良い。
チーズは内側が肉厚になっていくので、リム側の内側を削った。
シェルの口の方は、切りたい高さでチーズをカットした。
この器具のおかげでそこそこ綺麗にカットできるようになった。
シェルに火薬や弾頭やワッズ等を入れた後には「クリンプ」してシェルの口を閉じる必要がある。
クリンプは「スタークリンプ」「ロールクリンプ」から選択。
スタークリンプは散弾などがこぼれないようシェルの口を完全に閉める方式で、ロールクリンプはスラッグの弾頭を抑えられれば良いといったクリンプ方式。
スタークリンプはLEE LOAD-ALL IIで行う事ができる。
ロールクリンプは電動ドライバーやボール盤に器具を取り付けて行う。(手動の器具もある)
シェルにかかる圧力と摩擦のより内側に巻かれたシェルが弾頭を保持する。
「スタークリンプ」と「ロールクリンプ」をそれぞれ試してみた。
テストはシェルに火薬も雷管もセットしないで行う。
スタークリンプはLEE LOAD-ALL IIのクリンプしたい枚数(6か8)のところにシェルをセットし、レバーを2−3回下げればそれなりに綺麗にできるようだ。
シェルをカットしている関係上中央にポッカリと穴が空いてしまうが、弾頭は固定されているので問題はない。
ロールクリンプは電動ドライバーを使用しても、ボール盤を使用しても上手にできなかった。
シェルに加わる摩擦が原因かとグリスを塗ってみたりもしたのだがやはり綺麗にクリンプできない。
シェルをもう少し短くカットすれば上手くいくかもしれないが、とりあえず今の環境で簡単にできるスタークリンプでいくことにした。
最後に一言
鉛購入から弾頭を作成するのに2回は鉛を溶かす、約20%の鉛をロスする。
そして不良品の弾頭ができたりカッターで切り落とされた鉛なども溶かしたりするので物によっては3回以上鉛を溶かして弾頭を造る。
最終的に全体の何%の鉛をロストするかなど調査するのは大変なので、大雑把に1発の弾頭を作るのに全体の30%の鉛をロストするとして計算すると
燃料 30kgの鉛から弾頭にするまでに5L位か? 600円
鉛 21kg = 6,000円 + 600円(燃料) = 1kg 285.7円 = 1g 0.314円
弾頭 21.4g=約6.7円
ワッズ約9円
ネジ約3円
ざっくり計算で弾頭やワッズなどは1発あたり19円。
雷管は1個19円。
火薬が1本454gで12,000円。
1gあたり26.4円位。
実包1個あたり17グレインを使用するとして1.1グラムだから29円。
という訳で1発あたりのコストは50円前後。
労働時間や器具のコストは計上しない。
20番のハンドロードは弾道の安定性を追求したいので、コスト云々を語るのもあれなのだが。
どうせ他の弾頭や雷管や火薬など試してみたくなるだろうから1発あたりのコストだけみてもしょうがない。
まあ、射撃場でデータを取るときは100発は撃つし、1年間では1,000発以上は確実に撃つのでコストが低いのは助かる。
次回は実包100発を製造して射撃場でデータを取ってくる予定。