風邪で出猟自粛しているのでタツマについて。
前にも書いたと思うけど、未だに聞かれるんですよね。
「なんでそんなに獲物に見つからないのか?」。
「なんでそんなに獲物が止るのを撃てるのか」って。
別に難しいことをしている訳ではないのだけれど、一応彼らにはブログを読めというために書いておきます。
おいしい肉を確保するために
私は今年度が狩猟6年目になります。
令和1年からはじめているので猟歴のカウントが簡単でいいですね。
今まで罠以外で獲った大物は全て巻き狩りによるものです。
1-2年目はとにかく獲物を撃つ機会も少なく年間で数匹、撃つ場所はなるべく心臓狙いだけど腹も撃ってた。
3-4年目はほぼ心臓撃ちでしたがこれだと前足がダメになりますね、獲物に気取られにくくなり年間10頭以上獲れるように。
5年目はハーフライフルの使用と射撃技術の向上により首や頭を意識して撃てるように、猟期で獲った13頭中10頭以上は頭か首撃ち。
6年目に入った今猟期は3日間の巻き狩りで3回オスシカがかかり、3匹捕獲、顔、首、肺(ロース)と撃っています。
肺を撃ってしまったパターンは撃てる範囲も非常に狭い状況でシカが小走りし、そもそもタツマの位置を間違えたから。
タツマについた時点で負けていたってパターンです。
獲物が止る、または歩いている、または自分が撃ちやすい正面から撃てる場面に遭遇するように意識してタツマについてます。
歩いているか止まっている獲物を撃つのが「楽」においしい肉を確保できます。
そういった自分が撃つのに有利な場面を意図的に「作っておく」のがタツマの仕事です。
おいしい肉を得たいなら撃つ場所は頭か首です。
頭なら首の肉も取れるので最高ですが、オスならトロフィーの回収を考えると首撃ちがベスト。
狙うのが首だと上にずれても頭にあたるし、下にずれても胸に当たるから気が楽です。
時点で獲物が横向き限定ですが、心臓か肺を狙うアバラ骨部分撃ちです。
前足は妥協する事になりますが、背ロースや後ろ足はおいしくいただけます。
最悪なのが胃と腸撃ちです。
内容物のくっさい匂いが肉に移ってしまいますので、私は肉の持ち帰りを遠慮します。
良いところを撃っても解体中に胃、腸、乳、膀胱を破ったら全て台無しですけどね。
タツマに配置されたらウトの把握を
先輩たちの過去の経験が受け継がれて現在のタツマの場所が決まっているはずです。
自分が配置されたタツマはよく知る必要がありますが、そこまでは教えてくれない。
たぶん、タツマを配置されるときって「このあたりにいてくれ」程度しか言われてないと思います。
タツマの位置までわざわざ引率してくれて、あそこからこう来るとか、あそこからもこう来ると教えてくれないかと思います。
私が配置する場合は可能ならやりますけど、説明する声で近くの寝屋の獲物に気取られたりするので良くない場合もあります。
タツマに指定された「あのあたり」のどこに自分が居るか、どこから獲物がどのようにくるのかは自分で現場を見て予想しなくてはなりません。
これがドンピシャで当たれば、獲物が走って来ても比較的楽に転ばす事ができます。
予想が外れると獲物が良く見えない、遠くを横切られても撃てないですし。
私も他の猟隊に参加したりするとタツマの位置が外れる事が多いです。
よく知らない猟場のタツマは難しいです。
私はタツマに配置された位置付近まで来たら、まず周りをよく観察します。
ウトと呼ばれている獣道や地形を見る為です。
ウトも猟隊によってウツとかスジとかいろいろ呼び方がありますので、脳内変換お願いします。
ウトがあったとしても、普段移動する時によく使うウト、逃げる時によく使うウト、小動物のウトもあります。
最新の足跡がついているウトを逃げてくる事が多いので、通りやすいのはその獲物が通った事があるウトかなぁと思いますね。
足跡の見分けは早朝に畑を見て練習するのが楽です。
そのタツマに配置されるようになってから何回獲物に遭遇したかの経験も大きいです。
季節とか状況によって微妙に変わると思いますが、パターンってだいたい決まってます。
伐採されたら「ここは通らなくなり、ここを良く通るようになった」とかの情報のアップデートも必要です。
山を歩けなくなった年寄りは過去情報だけで指示してくるので、こちらからも情報は共有してあげましょう。
とはいえ、獲物がよく通るウトというのは昔から変わらないようです。
タツマの位置は猟隊にとっての財産ですので、大切に受け継いでいきましょう。
タツマはどこに隠れるか
獲物が通るウトを予想したら、次はどこに隠れるかです。
何かに隠れていないと獲物に早い段階で発見され、獲物に隠れられたり撃ちにくい方向に移動されるのでかなり不利ですよ。
自分が隠れる場所は木の前後左右、石の上とか裏とか草の前後とかタツマの現場によってさまざまです。
隠れる場所によってはあのウトは撃ちづらくなる、というか見えなくなるウトもできてしまう。
そういった場合は、前後に移動したりすると2つのウトが重なって1つになったり、地形の変化で守備範囲が狭くなってくれたりします。
ただし他のタツマとお互いの射線にいるのは危険なので状況によりけりですが、しっかりと他のタツマの位置は把握しておきましょう。
タツマの場所で最悪だと思うのは、隠れるところのない高台だったり平地。
確かにこちらから獲物は見つけやすいし撃ちやすいんですが、獲物からも丸見えですよね。
そのような場所は無理くりでも草などに隠れるか、申請して移動するか。
このような場所に固執する人もいるのですが、獲物に見つかって獲物は近くに来ないし、来るとしても超ダッシュ状態とか。
だったら隠れていれば楽に獲物は獲れるのか?
これも単純ではありませんね。
よくあるのが、木の裏に隠れていたので横を通った獲物が撃てなかった、つまり木が邪魔したって事ですね。
木の裏にぴったりとつくように隠れたら、木の左右どちらか側しか撃てませんから。
私も木の裏に隠れる場合もありますが、そうした場合、撃ちにくい側を獲物が通ってしまったらどうやって撃つかまで事前にシミュレーションしますね。
木の裏には向こう側にも木があるよう位置調整したりして、どうせ撃てない方向があるならそれなりに工夫します。
撃つときに1歩2歩下がって銃が木に当たらない位置に移動するとか。
ただ私が木の裏に隠れるというのは最終手段です。
だって撃ちにくいし、獲物も見えにくいんですもの。
私が一番よく隠れる?のは「木の前」になります。
時点で石の上に座る(楽だから)
草の前に座る(楽だから)
草の裏に座る(ちょっと見えにくい)
木の前って丸見えなんじゃないの?
そうですね、獲物から見えると思うのですが実際はバレてる感じもなく楽に撃てるんですよ。
獲物を止めろ
獲物が止まりやすいところにタツマ張れって事です。
獲物は犬に追われていても、犬を引きはがせば小走りになり、隠れられるところがあれば止ります。
鉄砲で撃たれても状況によっては止りますし、下草で隠れられるなら座り込みます。
おもしろいのが群れでも綺麗にみんな木の裏に隠れて、こちらから見えなくなるんですよね。
どんなところで止まる事が多いかというと、山を登り切ったあとのちょっと平らなところとか。
地形が変化する前にある木の裏の隠れやすい場所とか、移動したら見通しが利いてしまうところになる手前ですかね。
暗いところ(針葉樹がたくさん)もよく止まります。
次に移動する場所付近の様子伺いをしているのだと思います。
なので獲物が止るであろう場所が撃ちやすい場所にタツマを張ります。
遠いほうがよりバレにくいので、自分の銃と射撃技術によって微妙にタツマの位置も変わります。
50mも離れていればこちらからは丸見え(他の方向からは木に隠れてる)で止まってくれたりもします。
止っている、歩いている獲物の射撃はすごく簡単なので、おいしいお肉を獲るなら首か顔を撃ちましょう。
迷彩ジャケットのすすめ
シカとかイノシシの見えている世界はモノトーンだと言われています。
「オレンジの迷彩を着て木の前で座っていても獲物がこちらに気づかない」のでそうなんでしょうね。
迷彩服で岩山とか木とかに隠れている人を探す画像見た事あります?
あれ、隠れている人一瞬で見つけられますか?
そういう事です。
私は帽子、上着、ベストはオレンジの迷彩を着ています。
帽子はこんな感じのやつ(自分のはRemingtonのロゴ入ってるけど同じ)
上着はTAGAMIのサイレントハンター
ベストはTAGAMIのコンプリートベスト
ズボンは別に迷彩ではないです。
顔は寒くなるとバラクラバを使用しますが迷彩ではないですね。
イヤーマフを付けているのですが、特にこれで気づかれている感じはしないです。
いつも色が薄めの色付きメガネかけてます、まぶしいと撃てないし、暗いとやっぱり撃てない。
見つかるとしたらメガネかスコープのレンズかバレルの反射光ですかね。
まぁ見つかっている感じはしないからテープ巻いたりしませんが。
こちらが大きく動いたり音を立てなければ、獲物が20mの距離だろうとも何も無いかのように歩いてきますね。
これが猟友会ベストと帽子ではどうなるかというと、試してないけどたぶん見つかりやすいかと。
猟友会ベストは人に対して目立つために着ているので、獲物に見つかるうんぬんは考えられてません。
だからミリタリーの迷彩は人に対して目立たないからダメです、せめてベストと帽子はオレンジ迷彩にしてください。
猟友会セットを着用しているなら木の裏に隠れるしかないですかねぇ。
ただし、サルとか鳥は色がわかるようです。
木の前にいたら速攻見つかって逃げられます・・・
匂いについて
「イノシシは鼻が良いから、タバコなんて吸ってたら来ないぞ」と言われてきました。
タバコを直前まで吸っていてもイノシシもシカも自分に気づかずにこちらに歩いてきますが・・・
自分は喫煙者ですね。
猟の日は暇なので吸う本数が増えるのか、1日に30本程度吸ってしまうこともあります。
今はタツマで勢子が入ったあともガンガン吸ってます。
飲食もしてますし、タツマの近くでおしっこだってしますよ。
そろそろ近くにきたかな~って時はさすがに吸いませんが。
それでもイノシシは自分には気づかないで歩いてきましたね。
ただ、獲物が来るであろう方向のウトは歩いたりしません。
さすがに地面の匂いは嗅ぎながら来ると思いますので。
座る事の重要性
タツマで座るな、と言われたりしますか?
自分は座って撃てる場所であれば、積極的に座るべきだと思います。
座っているほうが見つかりにくいと思います。
疲れの問題もあります。
自分は膝が悪いので長時間まっすぐビシッと立っていることはできません。
疲れると体が左右に揺れてしまうので、獲物に見つかりやすくなってしまいます。
座っていればほとんど動かないので、石と同じですよ。
横を走っている獲物は若干撃ちにくくなります。
肘を膝などに固定しなければ立射にはおよばないけど体を回して撃てますけどね。
視界は低くなるので、撃ちたい位置が座ったら見えない場合は立ちます。
椅子に座るのもありです。
折りたたみいすは地面が平じゃないと使えないのでダメっす、使える場所探しが必要なので。
私のおすすめはワンポールの椅子です。
高さも高くできるし、対応できる地形が多い。
ただ足のゴムが地面に刺さったまま回収できない事が多い。
ちなみに私は今年で購入3回目。
椅子自体が行方不明になる。
音
シカはめっちゃ耳が良いです。
自分がシカに気づかれるのって、撃つ直前に銃の安全を解除したタイミングだったりします、違うかもだけど。
まぁ、真相はともかくなるべく音は出さないよう注意しています。
まず足元の整地。
極力草はつぶします、可能ならナイフで切る。
石とか枝もどけます。
どうしても音が出そうなら風で木が揺れている時に出す、屁とか。
まぁ鳥が音を立てまくるし、川の近くなら気配なんてわからんし、獲物が近くにいないならそこまで神経質になる必要もないと思うけど。
スリングを取り外す。
銃とスリングのパーツが当たってカチカチなるので。
自分のスリングはMagpul MS3なんで銃からすぐに取り外しができるから、立って待つとき以外では外してしまいます。
で、獲物が近くになったら音を出さないようスコープで獲物を補足し安全を外してズドンです。
上半身の動きによる上着が擦れる音は、TAGAMIのサイレントハンターを着ているので出にくいです。
自分にとってはイヤーマフも結構重要です。
マズルブレーキを付けているので爆音から耳を守る為もあるのですが、獲物の気配を早く察知する為にも使えてます。
地面に枯れ葉が詰まっているなら100m以上先の足音もわかる感じ。
勢子とか犬の方向やおおよその位置なんかもすぐにわかりますよ。
無線機の音も有線で聞くことができるので巻き狩りでも使えます。
自分が使っているのはMSA SORDIN。
最近Blue ToothタイプのCaldwellの電子耳栓を購入したのですが、音質が悪い。
不自然な音に変換されてしい気持ち悪いから最近使ってない。
狩猟で使うイヤーマフは音質も重要ですね。
動きはゆっくり
獲物は動きにも敏感ですが、ゆっくり動けば気づかれにくい。
銃を構える時なんて動き丸見えですからね、でも逃げられない。
ダメなパターンは、見えない獲物を見つけようと体や首を動かしてしまう、立ち上がる行為です。
音も出やすいのでバレやすいですね。
木に隠れた獲物から見えていないなら、銃を構えて待っていても良いかと思います。
もちろん安全はかけて引金には指を入れない状態で。
長距離なら見つかりにくい
獲物と100mくらい離れているなら、木などの情報量が多いはずなのでまず獲物には気取られないはず。
止まるような場所となると木などが邪魔で見えない可能性のほうが高いと思うけどね。
もし見えるならハーフライフルがあれば余裕で首を狙えますね。
100m以上で獲物に気づかれてしまう人は動きでバレてるか、大きな音を立ててしまったか。
座って狙えるなら座ってしまいましょう。
追われている獲物
直前まで犬に追われているとか、勢子に撃たれて逃げているなら獲物が止まる可能性は非常に低いです。
ちゃんと隠れていないと、逃げている獲物はこちらを見つけ次第、全力で進行方向をカクっと変えてきます。
予想外の方向に行くので撃っても当たらないかも。
隠れている前提で、止まらない歩かない獲物はどのタイミングで撃つか。
横から撃つのか、正面から撃つのか。
私は正面から撃つ方が好きです。
的がどんどん大きくなってきますからね、首にも当てやすいです。
だからウトの正面に近い木の前に座る事が多い。
ウトの予想が外れて横から撃つ場合は心臓を狙いますかね。
首狙いは獲物が常に一定の速度と高さで動くわけではないので外す可能性が高くなります。
心臓なら早くても前足の付け根付近、遅れても肺です。
横から狙って腹を撃つのは、撃つのが遅れすぎなので動的の練習してくださいとしか。
私は50mで心臓に当てるなら体の前の空間を狙ったりするけれど、首下ギリギリを狙えばアバラのどこかにあたるはず。
獲物との距離が近いならレティクルが心臓の近くに入るくらいで撃たないとだめ、50m感覚で撃つと弾が体の前を抜けてしまう。
ただ横から撃つ場合は木が邪魔になる事が多く、狙う範囲に木が何度も出てきてじっくりは狙えない。
今猟期の2回目はまさにそれ、木と木の間が狭いからちゃんと狙えない感じで肺に当ててしまった。
尻側からはあまり撃たないです、それはもう自分抜けられて負けてますよね。
尻を撃っても後ろ足や腹に弾を当てる事になるので、まぁ肉はひどい事になります。
だから無理くり首を狙うしかないですが、的がどんどん小さくなるので当てるの難しいです。
そのような場面ってだいたい自分ジャムってます。
最後に一言
私のコンセプトは「楽をする」、これ。
走っている獲物を撃つのも楽しいのですが、肉を回収する猟隊に所属しているので、いかにうまい肉を楽して取るかに重点を置いてます。
そのためにはある程度の投資は必要かと。
射撃練習はお金がかかりますが、射撃練習しないでどうやって獲物に弾を当てるのか。
猟期中の数少ない撃つチャンスで確実に獲物を獲るには練習が大事だと思います。
獲物を外しまくれば微妙なタツマに降格、当たりまくれば良いタツマに昇格する事になりますし。
正直、的を狙うより獲物を狙うほうが緊張しないので楽ですよ。
迷彩服とイヤーマフは神。
地面に座ってタバコ吸って、獲物が来る気配がしてから撃つ準備してあとは狙って撃つだけ。
迷彩とイヤーマフを全部揃えるのは10万円程度必要だけど、長く使えるものだし。
銃もハーフライフルにして1-6倍ショートスコープを付けてから楽になった。
自作の弾代は200円もしないし、遠くを狙えるし。
最近一番小さいイルミ付けてますが、猟期のシカの首は黒いから狙いやすくなったような。